不定期な日記帳の遺構

はてなダイアリーで運用していた「不定期な日記帳」の遺構の上に成り立つ2019年3月より再始動したメインブログ

杞憂

陽の昇らない内に布団から出て、日を跨いでから自宅に戻り、丑三つ時と呼ばれる時間に眠りにつく。

 

スーツを着て、満員電車に揺られ、会社に着けばプレゼンの準備に追われ、上司や客からは怒鳴られ、そして周到に準備をしたはずのプレゼンには多くの見落としがあり、顧客からの信用を失い、そして受注さえ取り逃してしまう。

 

他の同僚は営業ノルマを達成するどころか、目標の何倍もの成績を叩き出す一方で、私はほんの情けで頂いた小さな受注しか獲得することしかできず、今にも会社を追い出されそうな空気が漂っている。

どこに行っても陰で笑われている感じがして、私の居場所などどこにもない。唯一一人になれる空間がトイレだが、そこにだってずっと居続けるわけにはいかない。一時的な避難場所にはなっても、根本的に何かが変わるということはない。

30半ば頃にリストラを宣言され、キャリアも技術も持っていない私は路頭に迷うことになる。恋人もおらず頼る家族や友人さえいない。あらゆる意味での孤独を味わうことになる。

 

自身の無能に殺されてしまう。

 

働き始めるまではそんなことを漠然と考えていた。高校生くらいの頃から何となく自身のふがいなさには気づいていた。不器用で要領が悪く頭だって良くない。何かをきちんと成し遂げたという経験がない。おまけに容姿だって優れているわけではない。大学時代のアルバイトでさえまともにこなせていなかったのだから、こんな私を受け入れてくれる場所がこの世のどこかにあるなんて思ってもいなかった。

 

それでも案外なんとかなるものだ。必死に食らいつかないといけないという焦燥感はいつでもあるものの、何とかやれている。むしろ想像以上に上手くやれている。

 

ある程度の知識と笑顔で対応する姿勢と、それから漏れがないようにかつ効率良く動く切り替えがそれなりにできれば万事okという環境にいる。

 

自転車での通勤圏内にあるので雨さえ降らなければ電車に乗る必要がないし、雨が降って電車に乗ることになってもちょっとは空席があるので基本的には座ることができる。おまけにスーツだって着なくて良い。

 

営業ノルマはあるけれど、仕事量が手に余る程なので十分に達成できる目標ラインだし、ある程度の顧客へのプレゼンはあるにせよ、資料を作ってみんなの前で発表をする的なものではなく、一人の顧客に対してざくっと説明するだけで済むので公式ばったあれこれを作る必要もない。商品カタログを引っ張って来てちょこっと提案するだけでプレゼン終了だ。


朝起きるのは普段学校に行っていたよりもちょっと遅いくらいの時間だし、帰宅も基本的には日を跨ぐことはない。何なら大学後にバイトに行ってそれから帰るよりも数時間早く帰宅することができるのだから自分の時間はそれなりに確保できる。(ここ最近は帰ってごはんを食べたらもう12時過ぎなんていうこともザラにあるけれども・・・。)

 

同僚ともそれなりに上手くやれているし、何とか足を引っ張らずに動けているので仲間としても認識されている。陰口がどうこうまではわからないが、自分のポジションも一応はある。どこかにこそこそ逃げ隠れしないと押し潰されてしまうなんていう心配もしなくても良い。リストラの心配だってない。

 

少なくともこの場所では、有能とまでは言わずとも、絶望の縁に追い詰められるような無能さは持ち合わせていなかった。

 

過去の私の一番の懸念材料だった社会で生きるということは何とか成功している。

そんな事情なのでいつでも不安の上を歩いているような感覚だが、落っこちるところまでは至っていない。それでも今後何が起こるかまではわからないので、何が起きても対応できるように、できる範囲で備えておく。