不定期な日記帳の遺構

はてなダイアリーで運用していた「不定期な日記帳」の遺構の上に成り立つ2019年3月より再始動したメインブログ

橋の下での演劇の公演を観てきた

かなり特殊な形態の演劇の公演を観てきた。

 

始まりは昨年の春だった。

引っ越しをして少し経った頃のことだ。

 

 

これまで住んでいた場所で何か面白い催しはなかっただろうか

 

 

完全に出遅れ気味な疑問が頭に浮かんだ。

調べてみたところ、どうやら比較的近場で珍しいタイプの演劇の公演が開催されていたという情報を得た。終演後数日が経過していたので、既に近所ではなくなったことに加えて開催日にすら間に合わないという状況であった。

 

 

しかし、同じ団体が似たような催しをする可能性は十二分に考えられる。そこで彼らの動きを1年間追い続けた。

 

 

軽く調べてみると彼らは

 

 

このような状況下でも演劇ができるはずだ

 

 

という信念から様々な場所で演劇活動を継続してきたようだ。

彼らは山だったり、滝だったり、谷底だったり、廃墟だったりと密になりにくい空間を利用してきた。ちなみに役所なんかにもきちんと届け出ているので法的な部分はクリアしている。役所への届けでに際して、橋の下で演劇を行うというのが前代未聞だったらしく、役所から申請をもらうのに一苦労したとのことである。そりゃそうなるわな。

 

 

そういった橋の下以外の場所も気にはなるが、それらの場所は結構な僻地であることもあって中々重い腰が上がらなかった。万が一おかしな団体であった時にすぐに逃げられないと困るというのが大きかったということは明記しておく。

 

そこから1年経過した段階で、1年越しの橋の下演劇を開催するという情報を得た。

 

 

これはいくしかあるまい。

 

 

そういうわけで先日、演劇の公演を観てきた。

 

 

 

 

 

色々あってまずはこうなった。

 

 

開演から終演までが午後の日中全部という日程となっていて、内訳としては

 

  • 前半パート(120分)
  • 休憩(30分)
  • 後半パート(90分)

 

合計4時間の構成であった。しかも当日は雨と来ていた。

 

 

前半から行くのはちょっと厳しいかな

 

 

という結論に至り、思い切って会場近くのスーパー銭湯で前半を見送ることにした。

 

 

前半~後半間の休憩時間の終わり間近に会場に近づいてみると、土手の上から50メートル程先にある橋の袂にテントを張り、屯っている10人程度の集団を発見した。

間違いなくこの人たちだという直感を得たので意を決してその集団まであと5メートルという地点まで近寄り、声をかけてみた。

 

 

あの~すみません。橋の下でお芝居をする方々ですか?

  

〇〇(団体)ですが・・・?

  

では合ってました。後半からなんですが今からでも観劇ってできますか?

 

はい、もちろん大丈夫ですよ!

 

どの辺りで待っていればよろしいですか?

 

その辺にいてもらえればその内始まりますよ!

 

 

的なやりとりをした。大学生と思わしき方々が多数と、数名のおじんとおばんがいた。

 

 

後半の開演予定時刻になっても一向にお客さんたちが集まらず、劇団の方々も各々が自由におしゃべりをするなり準備をするなりしていた。まるで全然知らない高校の同窓会に呼ばれちゃったみたいな感覚に陥ったけれど、これから1年越しのお芝居を観るのだから全てを我慢するしかあるまい。

 

 

強風でテントが飛ばされそうになったのを劇団関係者さんの内の数名と押さえ、最終的には解体作業まで手伝ったけれど、それすらもレクリエーションの一環だ。

 

 

そうこうしている内に段々とお客さんが集まり、劇団関係者も揃いだし、合計20名ほどの大所帯となった。

 

 

何となく人が集まり出した段階で煮物が配布されるなどして公演再開前にも関わらず周囲は大盛況となったが、見ず知らずの人から口にするものを受け取るわけにもいかないので私だけは距離を取っていた。それにしてもアットホームすぎるだろう。

 

 

そうしていると

 

 

唐突に本番が始まった。

 

 

唐突すぎてびっくりした。

 

 

 

この後は演劇の内容に関わるものなのでざっくりとした説明にはなるが、若い女優による一人芝居が2本(それぞれ別の役者が演じる)とシメの合唱で後半の90分が終了した。全体的にフリーダムなお芝居であった。内容は小難しかったが、若い人の熱演にエネルギーをもらった。

 

 

さっきから若い若いと書いているが、基本的に20歳前後のガチの若者の集いらしく、先ほど述べたおじんとおばんはどうやら彼らの保護者とのことであった。合唱が一瞬で終わったことを考慮すると女優1人につき1時間弱を単独でしゃべり続けていたことになる。しかも結構な小難しい内容を。すごすぎる!

 

 

正直、シュールな芝居過ぎて理解が追い付かない部分もあったが、それを含めても尚、彼女らの芝居に対する姿勢には見習うものがある。しかもバリバリの屋外なのにも関わらず、ぶっ通してでしゃべり続けていた。あの屋外できちんと声が届いてきたのも凄まじい。

 

 

物理的な構造面でも斬新なアイデアが採用されている。屋外であり劇場公演ではないということもあり固定の客席や舞台がなく役者が河原を練り歩くシステムになっているので、必然的に観客である我々も役者に付いて回ることになる。

 

 

このような斬新な芝居を観た後で、各役者や団体自体の公演告知が入り、最後に観劇料の1000円+任意の額を支払う形であったので、まるでピューと吹くジャガーにでも出てきそうな企画を受けた気持ちになった。

 

 

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ジャガープレゼンツ

がっかりイリュージョン

入場料600円

 

 

 ちょっとした微妙な気持ちになりつつ、エネルギッシュな役者さんたちのあふれ出んばかりの熱量の芝居を観て元気をもらいつつ、そもそも屋外での演劇の実行についても考えさせられることがあり~という形で多方面での稀有な体験をした。

 

 

来年も行くかどうかはわからないが、現物を拝むことができて非常に良かった。観ていなかったらもう1年この演劇が気になって仕方がない!という悶々とした時を過ごしたであろう。

 

 

良いものを観てきた。 

 

 

 

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