原作と同時進行で映像作品が展開されると結末が分岐することがある。
ファンからどのような反応を引き出すかはその作品の出来次第、ファンの層次第で異なってくるが、多くの場合は不評を買うことになる。
原作が当たったからこそ映像化されるのであり、そこから異なる分岐を見せると
一定数の指示を得た層を突き放すことになる。
映像化が支持を得ている証という見方がある一方で映像化によってその人気を薄めることもある。
往々にしてクリエイターに分類される人々は独創的なものを作りたがる。そんな人種の人たちが原作の後追いなどするわけがない。そういうわけで極稀に原作に対して反旗を翻した作品が大当たりすることもあるけれど、原作の壁は中々超えることがない。
『AKIRA』はどうだろうか。
先日、漫画版の『AKIRA』を読んだ。
買うと高いけれど中古では殆どお目にかかることがなかったし、レンタル本の店にもあまり置いていなかった。置いてはいても貸し出し中のことが多かった。かなり昔の作品のはずなんだけどね。やはり根強い人気がある。もちろん、最近高クオリティでの映画版の上映が行われたりもしているので、そういった影響も受けてのことだろう。
結局、少し離れた図書館で借りることにした。図書館ならば無料で借りられるし、世界的名作という括りになるので大きめの図書館ならば児童図書的な感覚で置かれていたりする。
画風からしても明白な通り、お子さんが読むには少し早いのでせめて中学生くらいからかな~とは思う。ちなみに映画版は12禁だったはず。
お恥ずかしながら1週間程前に初めて映画版の『AKIRA』を観た。SFものも近未来ものもあまり得意ではないのでそこまでのめり込むことはできなかったけれど、その世界設定を目撃することができたのは非常に良い体験であった。
映画版を見終えた後にwikipediaなどで裏話を漁っていると、どうやら映画版と漫画版が異なるものであることが判明した。
この記事の冒頭でも述べた原作と映像化が同時進行したことによる影響である。
しかし今作については映画版の指揮者が漫画版の原作者であることもあり、上記のような批判の声はあまり見られなかった。そりゃ完全なる作者公式の展開しかないのだから批判のしようもないだろう。
2つをフラットな気持ちで見比べた感想としては
-
映画版は漫画版の展開をぎゅっと凝縮しているバージョン
- こだわりの構図がわかりやすくその構図を描くためにこの漫画を描いたのではないか
- 無論、映画版もこだわりのアニメーションがわかりやすく以下同文
- 細かい描写の多い漫画版を映像化するに当たって無理なく丁寧に描写されている
- 漫画版の前半~中盤の台詞回しが絶妙で、後半はドンパチするシーンに力が入っている
- 映画版は台詞よりも展開よりも何よりも映像が重要視されている
というものが挙げられる。
特に言いたいのは映画版は漫画版の要所要所を摘み取っては省略を重ねてきれいにまとめた感が凄まじいということだ。逆に言うと映画版を観た後に漫画版を読むとその設定の深さに驚かされるし、映画版での省略の努力の滲み出し方に感嘆してしまう。
映画版だとしれっと素通りされている部分が漫画版ではめちゃくちゃ光っていたりするのだ。
さらに漫画版の台詞のヤンキーっぷりには非常にぞくぞくさせられた。皮肉を込めた応酬が何ともたまらない。後半に進むにつれてそういった様式美は薄れて行き画力勝負の世界へと移っていくので、個人的には前半がかなり好みであった。
後半についてはどうしても汚いジブリ(良い意味で!)を連想してしまう。しかしこの辺りは好み次第で感想が変わる部分なので、刺さる人には深く刺さることだろう。
映像描写や台詞回しについては是非とも各作品を読んで確認して頂きたい。どちらから当たるかを悩まれているならまずは映画版を選んで頂くことをおすすめする。
漫画版はアクセスのハードルが少し高いが、映画版はTSUTAYAなどで気軽に借りられる上に、2時間で観終えることができる。
とは言っても両者は完全なる別物だし、そもそも別媒体なので、せっかくならば両者ともチェックして頂ければとも思う。
百聞は一見に如かず!
AKIRA(1) (KCデラックス)
クリックするとAmazonのリンクに飛びます。